にっき

技術的な話題はないです

「人が消える」

気がつくと、ブロック機能が現実世界と連携する機能が実装されていた。

 

男はその SNS の中では人嫌いで有名であった。目のつく発言がタイムラインに現れると即座にブロックして回るのがいつしか日課になっていた。しまいには有名人に偉そうなコメント(通称クソコメ)を繰り返すアカウントを一掃するために一括ブロックツールを導入したりと、日増しにエスカレートしていった。彼がブロックしたアカウントはすでに数万件に達しており、その数は今なお上昇を続けている。 

実世界関係性断絶システム、通称 RWBS (Real world Blocking System) は総務省が Txxtter 社 と MUT (Metropolitan University of Toxyo) との共同で開発を進めている拡張現実 (AR) システムである。元々 AR の一応用という位置づけで MUT の○教授の開発したものであったが、インターネット上での炎上騒動が暴動や傷害事件に発展する事態が多発し収集がつかなくなったことをきっかけに実応用への関心が高まり、大幅な研究予算が投入された末 202x 年に試験導入されることとなった。

 男はある大手商社に勤務する平凡な会社員であった。ある日、男は自分の右隣の席がいつの間にか空席になっていることが気がついた。そのことを不思議に思い向かいの席の同僚に訪ねてみるも、要領を得ない返事しか帰ってこない。妙なこともあるものだ。

 

その日の勤務を終え帰宅する最中、男は日課であるアカウントのブロック作業を遂行していた。丁度有名なメディアミックス作品周りで一騒動あり、タイムラインは男にとって不快な「人間味のある」発言で溢れかえっていた。早速彼は「有名人のアカウントにコメントしているアカウントをブロックするツール」にログインし、話題の当事者であるアカウントの ID を入力した。たちまち 100件ほどのアカウントが検索結果に出てきたので、男は迷うことなく「ブロックする」ボタンをクリックし胸を撫で下ろした。そのあと彼は自身のアカウントのタイムラインを眺めつつ、誰でも思いつきそうで無意味に扇情的な物言いをしている 1万シェアされたつぶやきを選んではブロックを繰り返していった。その日のブロック件数は 1500件にのぼった。

 翌日、男は向かいの席がいつの間にか空席になっていることに気がついた。最近は異動が目立つな。男は右隣の席の同僚に原因を訪ねようとした。すると、右隣の席が空席であることに気がついた。はて、いつからだろう… 

おわりに

中途半端に時事を絡めた設定にすると諸々粗が出て良くない…